勝てば日本ラグビーの存在感を、再び世界に発信する日になる。
ジャパンが11月4日に戦うオーストラリア代表、「ワラビーズ」との試合は、それほどの重みを持っている。
2017年8月21日現在、ワールドラグビー世界ランキング5位の「ワラビーズ」。6月のウインドウマンスにはスコットランドに敗れ、8月のザ・ラグビー・チャンピオンシップ(以下TRC)の初戦でもニュージーランドに34-54と完敗するなど、世代交代の難しさに苦しんでいる状況だ。しかし、TRC第2戦では逆転負けを喫したものの、スコアは29-35。潜在能力を示し、2015年のラグビーワールドカップで準優勝、過去の同大会で2度優勝した勝負強さをあらためて感じさせた。この秋、そんなラグビー大国にサクラのジャージーがひと泡吹かすなら、世界は驚き、ジャパンは大きな自信をつけることになる。
世界屈指の攻撃力を持つFBイズラエル・フォラウ、驚異的なタフさで仲間を鼓舞するFLマイケル・フーパー主将など、ワールドクラスの中でもトップレベルの選手たちをどう封じるのか。知恵と工夫を積み重ねてきた歴史を持つチームをどう混乱させるのか。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(以下HC)率いるジャパンが勝つための条件は、そこに絞られる。
6月のアイルランド代表とのテストマッチシリーズまでに、セレクションをほぼ終えたと言っていいチームには、ジョセフHCの考える世界で勝つラグビーを実践する選手たちが並ぶはずだ。
強い相手に決まった形から力を出させないようにするためのキッキング。チームは、独自の戦い方の成熟度を高めるとともに、攻守において接点で前に出る工夫と強化、人材発掘も進めてきた。
ワラビーズとの決戦では、昨秋から取り組んできたそれらのスタイルの進化形を示さないと結果は出ない。そして、2019年ラグビーワールドカップまでの残り時間(約2年)を考えると、足踏みしている時間はない。ジャパンが加速的に成長するためにも、勝利か、それに匹敵する手応えを絶対につかまないといけない。
ジョセフHCはこの対戦が決まったとき、「オーストラリア代表戦は、日本代表が始動してから1年が経ち、どれだけ歩むことができたのか、自分たちの立ち位置を知るチャンス。そして日本のファンにとっては、世界のベストプレーヤーをホームで見ることができる、またとない機会」と言ったが、今は勝つこと意外、頭にないだろう。
世界トップクラスと真剣勝負(テストマッチ)の場で戦えることは、プレーヤーにとっては何よりも名誉で幸せなことだ。日本のファンにとって11月4日は、現在のジャパンの選手たちが持つ最高の力を知る日になる。
文:『ラグビーマガジン』編集長 田村一博