アイルランド代表、どんなチーム?‥‥part 2

(文・出村謙知)

偉大なる敗者。
世界のラグビー史を紐解いた時、このポジションがアイルランド以上にぴったりくるチームは存在しないのではないか。

ホームネイション国のライバル(イングランド、スコットランド、ウェールズ)全てに通算成績で負け越し。
さらに、その範囲をフランスおよび南半球の3強(ニュージーランド、豪州、南アフリカ)に広げても、その史実は変わらない。
前記の強豪国中、過去のラグビーワールドカップ(RWC)で、4強入りしたことがないのもアイルランドだけだ。

それでも、自国以外で選ぶならアイルランドの試合を観たいというラグビーファンは少なくない。
それは、“アイリッシュスピリッツ”とも賞賛される、どんな相手にも臆せずに立ち向かっていくファイティングスピリッツ溢れる戦いぶりが、数多くの名勝負を生み出してきていることを世界中のラグビーファンが認識しているからでもあるだろう。

そんな偉大な敗者たるアイルランドが生み出した名勝負をひとつだけ紹介するなら、RWC1991準々決勝となる。
地元ダブリンの今はなきランズダウン競技場に豪州を迎えたアイルランドは、最終的にその大会で頂点を極めることになるワラビーズを追い詰めた。
ニック・ファージョーンズ – マイケル・ライナーのハーフ団やティム・ホラン – ジェイソン・リトルのCTB陣、さらにテストマッチ最多トライ記録保持者だったWTBデビッド・キャンピージという全く隙のないモダンラグビーを繰り出す豪州相手に徹底したハイパント攻撃と“魂の”としか表現のしようのないハードタックルで追い詰め、試合終了5分前に飛び出したFLゴードン・ハミルトンのトライ(ゴール)で18 – 15と勝ち越しに成功する。

この時のランズダウンは多くの地元ファンがグラウンドに飛び出すなど歓喜の渦に包まれたが、そんな興奮状態にも冷静さを失わなかった王者がキックオフから理詰めで攻めて、キャンピージからラストパスを受けたSOライナーがトライを決めて再逆転。
ピッチ上とスタンドの緑色集団にとっては、天国から地獄へ突き落とされる結果となったが、これほどまでに敗者がクローズアップされる名勝負がそうはないのも事実だ。

歴史を紐解くなら、アイルランドは1875年にイングランドとの間で最初のテストマッチを戦っている。対戦カードとしては、1871年にラグビー史上初のテストマッチとして行われたイングランド – スコットランドに次ぐもので、1877年にはアイルランド – スコットランド戦も行われた記録が残っている。

前述のように、他の強豪国に対して軒並み負け越し、RWCでも準決勝に進んだことのないアイルランドだが、もちろん過去に何度かの黄金期も経験している。
5カ国対抗(現在は6カ国対抗)の全勝優勝である「グランドスラム」を成し遂げたのは1948年、2009年の2度。また、同大会でイングランド、スコットランド、ウェールズの英連邦3チームを破る「トリプルクラウン」は1894年、1899年、1948年(GS)、1949年、1982年、1985年、2004年、2006年、2007年、2009年(GS)の計10回達成している。

アイルランドを代表する名選手を挙げるなら、共に長年にわたってアイルランド代表主将を務め、ブリティッシュ&アイルランドライオンズでも活躍したHOキース・ウッド(1994〜2003年にアイルランド代表58キャップ、ライオンズ5キャップ獲得)、CTBブライアン・オドリスコル(1999〜2014年にアイルランド代表133キャップ、ライオンズ8キャップ獲得)が双璧と言っていいだろう。
前者が泥臭いスタイルでかつてのアイルランドの象徴で、後者は現代のモダンなアイルランドラグビーの象徴と言えるかもしれない。
両者が世紀をまたぐかたちでのアイルランド代表主将のバトンを受け渡し当事者である事実も象徴的と言えば象徴的だ。

偉大なる敗者として紹介してきたアイルランドだが、6カ国対抗での成績を見ても2000年以降は完全にホームネイションを引っ張る存在となっているのは間違いないところ。
別稿でも触れているとおり、前シーズンは史上初めてオールブラックスを倒し、連勝記録を続けていたイングランドに黒星もつけた。

先に行われたRWC2019日本大会プール組分け抽選でも当然のように最強グループである「バンド1」に、ニュージーランド、イングランド、豪州とともにランクイン。ドローの結果、28ヶ月後の本大会では日本と同じプールAで戦うことが決まった。
もちろん、アイルランド史上最強チームとして日本大会で初のベスト4入り、そして世界制覇を成し遂げるため、前哨戦となる6月の「リポビタンDチャレンジカップ2017」(17日=静岡、24日=東京)でも本気の戦いをしてくることに疑念の余地はない。

アイルランド代表133キャップを誇るCTBブライアン・オドリスコル元主将はまさに不世出な存在(photo by Kenji Demura)
アイルランド代表133キャップを誇るCTBブライアン・オドリスコル元主将はまさに不世出な存在(photo by Kenji Demura)
アイルランドらしい闘将と言えば、HOキース・ウッド元主将の存在も忘れられない(photo by Kenji Demura)
アイルランドらしい闘将と言えば、HOキース・ウッド元主将の存在も忘れられない(photo by Kenji Demura)

■6月17日(土)静岡・エコパスタジアム

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■6月24日(土)東京・味の素スタジアム

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こちらは、2017年6月10日(土)・17日(土)・24日(土)に開催される「リポビタンDチャレンジカップ2017」に関する情報を提供する公式ウェブサイトです。

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